前回まで、シワには、意外な原因がいくつかあることをお伝えしてきました。今回は、健康とシワの関係についてお伝えしていきたいと思います。
そのシワ、大病のサインかも?
ひとくちにシワといっても、その原因はさまざま。
笑ったり怒ったりすることで表れる表情ジワや、加齢ゆえのたるみジワ、乾燥からくる小じわ…。
そして深刻な病気を患っているときも、シワは出現するのです。
たとえばガン。
短期間で急激に体重が落ちるため、頬がげっそりして何本もシワが入ることがあります。
頬のあたりのシワと言ってもほうれい線とは全く別物。
何本ものシワが連なり、まるで洋服のドレープのようになってしまいます。
また、HIV感染も同じです。
エイズを発症していないHIV患者は、基本的には健常者と同じように生活しています。。過去に何度か診察をしたことがあるのですが、体重減によるシワはもちろん、免疫力の低下により、吹き出物やイボもある。普段の診察で肌状態を見て、深刻な病気を患っていると気づくことも実は多いのです。
シワが出やすくなる病気としては、ほかに甲状腺異常があります。
甲状腺機能低下症は代謝がガクッと下がるため、肌色が悪く、くすんでいることが多く、
逆に甲状腺機能亢進症は、甲状腺内組織の活動が異常に活発になる病ため、代謝がよくなりすぎて赤ら顔になったり、肌が乾燥してしまい、小じわがたくさん現れてしまいます。
代謝がいいのは健康な証拠。もちろん、肌にもいいだろうって?
いえ、 なにごともバランスが大事。
たとえばサウナが好きで、定期的に大量発汗する人ほど、顔には小じわが多いのも事実。
汗をかくのは悪いことじゃないけど、度を過ぎると水分補給が追いつかないため肌が乾燥してしまい、シワなどのトラブルが出やすくなるので注意が必要です。
甲状腺機能になんらかの異常がある場合、肌にサインが出るより先に体に症状が現れることがほとんど。
でも皮膚がんは元より、内臓のがん、白血病など血液のがんの場合は、真っ先に肌に変化が出ることもしばしば。
急激に顔の肉が落ちる、乾燥して小じわが出る、顔色が悪くなるなどに気づいたら、精密検査をしたほうがいいかもしれません。
紫外線で怖いのは、シミだけじゃない!
ところで、あなたは1年中、紫外線対策をしていますか?
- 紫外線対策は夏だけでいいと思う
- 日焼け止めは、朝の1回だけ塗る
- ファンデーションにUVカット効果があるから、日焼け止めは塗っていない
- 外出しない日や曇りの日、雨の日は紫外線を気にしてない。
- 日傘や帽子があれば、日焼け止めは塗らない。
これらの項目に1つでも当てはまる人は要注意!
最近ではオゾン層の破壊により、夏ほどじゃなくても紫外線は1年中地球上に降り注いでいます。紫外線の量に多少の違いはあるけれど、雨の日も曇りの日も同じこと。
じゃあ日傘や帽子をかぶればいいでしょって?
いえいえ、それじゃ地面からの照り返しを防ぐことはできません。
部屋の中も万全ではなく、安心はできません。波長が長く、肌の奥まで入り込んでダメージを与える紫外線A波は、窓を突き抜けて室内に入ってきます。
紫外線A波(UVA)が表皮に達する割合は約9.6%。シワやたるみにつながる、光老化に深く関わると言われています。
そして紫外線B波(UVB・中波長)は、シミの元を作るよう肌を刺激する厄介な相手。
とにかく日焼け止めの徹底は、肌老化を防ぐ上で欠かせないのです。
一年中、一日に何度も塗りなおさないと、紫外線は防ぐことができないと覚えておいてください。
紫外線B波を浴び続けることにより、もっとも心配なのは「皮膚がん」。
紫外線を浴びると、肌の基底細胞の遺伝子が損傷します。
もちろん傷ついた細胞のほとんどは修復されますが、大量の紫外線を浴びると遺伝子に傷をもったままの細胞を排除できず、その傷が修復されずに正常な細胞でなくなることがあります。
これが皮膚がんの原因というわけ。
日本はまだまだ、紫外線の危険性に対する情報喚起が不十分だと感じます。
おそらく日本人には、ある程度は太陽にあたったほうが健康になるという意識が根強くあるからではないでしょうか。
でも実は、18歳頃までに浴びた紫外線によって、その後の皮膚がんの発生率が決まるのではないかとも報告されています。
紫外線を浴びた年齢が若ければ若いほど、皮膚がんを発症する年齢が早まるとか。
日本より皮膚がんの発生率が高いオーストラリアでは、国を挙げての紫外線対策が行われています。
皮膚がんとまでいかなくても、シミやシワの原因になる紫外線はエイジングケアにとっては百害あって一利なし。
紫外線を浴びてしまったら、ダメージを払拭できるよう、一刻も早くビタミンCやトラネキサム酸配合の化粧品を率先して使うこと。
そして、点滴やサプリメントで、それらの栄養素を補うことも大事ですよ。
頭蓋骨がゆがむと、シワになる!?
人間の老化は、下垂、委縮、拘縮の順で進むと言われています。
顔を構成する皮膚から皮下組織、筋肉、骨など、すべての構造において、これらの老化現象は生じていきます。
老化というと、肌のたるみを真っ先に思い浮かべますよね。
でも実際は、皮膚も筋肉も骨も衰えるわけで、それが積み重なった結果がたるみであり、シワなのです。
その中でも、骨(顔面骨、頭蓋骨)の委縮、拘縮はシワと密接に関係しています。だって骨がゆがめば、皮膚~皮下組織、筋肉も少しずつ〝ズレ″てしまいますから。
なんだか難しい言葉が並んでしまいましたが、中身が小さくなってしまったら、外側の皮が余ってたるむのも当たり前ですよね?
骨の委縮、歯列の崩れ、歯肉の委縮、顔全体の筋肉の下垂、皮膚のたわみ…。さまざまな部位で老化が起こり、シワは生じていくわけです。
額にシワができたからといって、しわ取りクリームを塗れば消えるってわけじゃないのは、そういうこと。
皮膚だけ気にするのではなく、骨や筋肉などあらゆる面からアプーローチしないと、シワのケアにはならないんです。
人生の積み重ねは顔のシワになってあらわれる
あなたのシワは、顔のどの部位に多いですか?
目尻ならば、あなたがこれまでの人生、よく笑ってきた証拠かもしれません。
イタリアでは、目尻のシワだけは美容整形で消さずに残す人が多いと聞きます。
笑いジワなんていう言い方があるぐらい、目尻のシワは幸せな人生の証なのですね。
口まわりにシワが刻まれているのは、不平や不満を顔に出しやすい人なのかも。
アゴを上向きにしてまわりを見下ろすようにしていると、口角下制筋という、口角をさげる筋肉が下へ引っ張られるんです。それによって口角が下がって、ほうれい線も出やすくなるし、口がへの字になって不満そうな顔になってしまう。
思い当たる人は、 なるべくアゴを下にひき、口角を上げる努力をしましょう。
そして眉間に深くシワが刻まれている人は、もしかして神経質な性格でしょうか?怒りっぽかったり、イヤな気持ちを外に出すことが多かったりするのかもしれませんね。
でも最近、30代前半の若い層にも眉間のシワで悩む女性が増えています。
原因は長時間のパソコン作業や、スマートフォン。画面の見過ぎで眉間にシワが寄りやすくなっているのです。目のまわりの筋肉を使うので緊張が強くなり、眉間のシワがどんどん深くなっていくというわけですね。
機会があったら、電車の中でスマホを使っている人をよく見てみてください。眉間にシワを寄せて、険しい顔で画面をにらんでいる人のなんと多いこと。
長く続けるほどシワは深くなるので、思い当たる人は気をつけてくださいね。
シワも更年期症状?
女性ホルモンの減少が原因で起こる、身体的・精神的不調のことを更年期症状といいます。
卵巣の機能が衰えて、卵巣から分泌されていた女性ホルモンの量が減少することで、さまざまな変化が出てくるのです。
身体的不調の代表例は、月経不調やほてり、のぼせ、大量の汗、めまい。精神的不調には、不安感やイライラ、憂鬱な気持ち、不眠などがあります。
でもそれとは別に、肌状態の悪化も立派な更年期症状なんです。
更年期に分泌が少なくなるエストロゲンは、皮膚や粘膜のみずみずしさに深く関係している女性ホルモン。そのため、コラーゲンの量や質が低下し、皮膚の新陳代謝も悪くなってしまう。結果的に肌老化がぐっと進行し、シワやシミ、乾燥、たるみといった肌トラブルが一気に押し寄せてきます。
皮膚がとても不安定な状態になるので、ちょっとした刺激でかゆみが出たり、シミができやすくなったりすることも。
これまで、激減した女性ホルモンを補うには大豆がいいとされてきましたが、大豆から女性ホルモンに似た成分、エクオールを体内で作りだすには特定の腸内細菌が必要で、それができる体質の人は2人に1人もいないことがわかってきています。
つまり、豆乳をたくさん飲んだからといって、女性ホルモンと同じ働きを必ずしも補えるわけではないってこと。
でも最近は、エクオールを直接摂取できるサプリメントなども登場しているので、気になる人はそういったものを取り入れてもいいかもしれません。
シワの改善効果も学術発表されていますので、「そういえば40代~50大でグンと肌老化が進んだわ」という方は、試してみる価値があるかも!
誰にでも訪れる更年期症状ですが、毎日のスキンケアやストレス、睡眠、食生活、飲酒や喫煙習慣によって、その症状には大きな差が出るもの。
また更年期が起きる年齢もだんだん若くなっているようで、早い人では40代前半から、なんらかの不調が出てきてしまうそう。
40代になって、肌が転がり落ちるように衰えるのはイヤですよね。
なるべくそのスピードを遅らせるよう、規則正しい生活と食生活を心がけましょう。
美肌の鍵は腸にあり!
肌状態だけでなく、体の健康にも深く関係しているのが腸。
腸内には重さにしてなんと1.5㎏、1,000種類以上、100兆個もの腸内細菌が生息していて、それぞれの細胞が環境を維持するためにさまざまな他者物質を生み出しています。
本来、人体に有害であるガスや物質を発生させる悪玉菌と、有益なものをもたらす善玉菌の力は拮抗しているもの。
でもその腸内環境がいったん乱れると、代謝や免疫にも悪影響を及ぼすといわれています。
発生した有害物質は、血液を通じて肌に届き、 ニキビや肌荒れ、免疫力の低下、くすみや乾燥、さらにはシワやたるみといったさまざまなトラブルを引き起こすのです
腸内環境を安定させるために大事なのは、まず悪玉菌の好物である肉などの動物性タンパク質を摂り過ぎないこと。そして、善玉菌を増やすことです。
ビフィズス菌、乳酸菌を含む食品を摂取したり、食物繊維が豊富な食材を積極的に食べたり。そして適度な運動も取り入れ、良質な便が毎日無理なく出るようになれば、体全体のめぐりもよくなり、栄養素や酸素、水分が良い状態でまわるようなる。
すると、老化の最大の原因である活性酸素も溜まりにくくなりますから、体も肌も若々しくいられるというわけ。
肌のことを思うなら、まずは腸を健康に。
どんな高級な美容液やクリームを使うより、どんなゴッドハンドのエステティシャンにトリートメントしてもらうより、目に見える効果が出ると思いますよ。
まとめ
大きな病気を患うと加齢などとは違ったシワやくすみが表れてくることがあります。それらは急激な体重減少や免疫力の低下、代謝の異常などが関係していました。「なんだか最近変だな」と気になる時は、ぜひ精密検査を。
また、腸内環境が崩れると免疫力低下、肌荒れ、シワやたるみなど色々なトラブルが起こります。ですから規則正しい食生活を心がけ、腸内環境を整えて善玉菌を増やしましょう。サプリメントを摂取するのも一案ですね。
徹底した紫外線対策や効果のある化粧品を使うことも大切ですが、身体の内側からアプローチをしていくことも重要なんです!。
次回は美容的な目線でのシワについてお話したいと思います。